スウェーデン出身のオーナー、ジャンネット・ミックスは、ストックホルムの大使館地区にあるアーツ・アンド・クラフツ様式のタウンハウスを、温かく洗練された居心地の良い空間に作り上げました。ホテル名の「エット・ヘム」はスウェーデン語で「家」を意味し、その名の通り、この場所は「自分の家のようにくつろげるスカンジナビアの隠れ家」です。この建物は2012年に個人住宅から改装され、ジャンネットはスタッフとゲストを家族のように大切にすることで「住むように過ごせるラグジュアリー」の本質を形にしました。

インテリアを手掛けたのは、英国のデザイナーであるイルス・クロフォード率いるスタジオリゼ。今ではよく耳にする「スカンジチック」という言葉も、エット・ヘムのような場所にこそふさわしいと言えるでしょう。本や羊毛のブランケットが並ぶエキレクティックな図書室、香り高いキャンドルが配された落ち着いたリビングルーム。冬には暖炉が燃え、夏には花で満たされた花瓶が置かれます。20世紀初頭の窓からは一切の格式ばった雰囲気が排され、ゲストはただリラックスするだけでなく、まるで自分の家のようにくつろげる環境が整っています。

1階のオープンキッチンを中心に、居心地の良い部屋が次々と続きます。アンティーク家具とコンテンポラリーなディテールが巧みに組み合わさり、全12室のスタイリッシュなスイートには家庭的な工夫が隅々まで施されています。薪ストーブや独立型のバスタブ、ヴィンテージのライティングデスクなど、あらゆる快適さが考え抜かれ、細部まで配慮されているのが特徴です。「トレンドには関心がない」と語るジャンネットは「タイムレスさ」を信条としており、その信念はエット・ヘムに息づいています。特に、レンガの壁が醸し出す独特の温もりが、このホテルの永続的な魅力を一層引き立てています。

ホテルオーナーとして「独立した精神」を持つことは、あなたにとってどのような意味がありますか?

独立したホテルオーナーであることは、自分らしさを基盤に、唯一無二のブランドやゲストが特別な体験ができる場所を創り上げることです。エット・ヘムは私自身の価値観と経験に基づいて構築されています。私たちは常に最高を目指し、ゲストの滞在を特別なものにするよう努力しています。スタッフは慎重に選ばれ、寛大でオープンな姿勢を持ち、常に向上を目指すことが信条です。そして、チェーンホテルとは異なり、意思決定をフロントラインに近い場所で行っているのも特徴です。
また、地元の季節の食材を調達し、ワインのセレクションを細心の注意を払ってキュレーションすることに注力。エット・ヘムは、アート、デザイン、音楽、新刊書籍が溢れる国際的でエキレクティックな出会いの場を目指しています。多くのゲストが、このホテルのカジュアルさと創造的で刺激的な環境を評価してます。ここは、クラシックなラグジュアリーホテル以上の個人的な体験を求める、旅慣れたお客様に選ばれる場所です。

ホテルのインスピレーションと、今後どこでインスピレーションを得ていますか?

エット・ヘムの構想は、私自身が旅先で理想とするホテルを創りたいという夢から生まれました。この夢を実現するうえで、イルゼ・クロフォードは私の価値観やビジョンを深く理解し、共感してくれました。私たちは完全な信頼と共有する信念に基づいたパートナーシップを築いており、彼女と共に手がけた成果には、想像を超える喜びを感じています。
私のインスピレーションの源は常に自然、旅、食、ワイン、ファッション、デザイン、アート、そして文化全般です。こうした要素を大切にしながらも、私は一過性の流行には左右されず「タイムレス(永続的)」であることを最優先にしています。

エット・ヘムが他のブティックホテルと異なる点は何ですか?

エット・ヘムは全12室という小規模なホテルです。私たちは、スタッフと私自身が常にお客様へ個別に対応することを重視しています。私たちは自分たちを「家族」として考え、ゲストを皆、親しい友人のように大切にしています。エット・ヘムで働く全員が高い教育を受けたプロフェッショナルであり、献身的で心からのサービスを提供する精神を持っているのが特徴です。私はスタッフがゲスト一人一人に通常以上の時間をかけられるよう配慮しています。
エット・ヘムでは、誠実さと寛大さを尊重し、すべてのゲストに同じ熱意をもって接しています。私はすべての方に、安全でリラックスし、しっかりと心からのおもてなしを受けていると感じていただきたいです。

ホテルでの滞在を24時間で満喫するなら、何をおすすめしますか?

昼食前にエット・ヘムに到着し、荷物を置いて市内散策に出かけるのがおすすめです。ダウンタウンにあるシュトゥーレホフ(Sturehof)でランチを楽しんだあと、美しいスケップスホルメン島を散策し、王宮や旧市街を見渡す景色を満喫してください。その後、時間があれば近くの近代美術館か、改装されたばかりの国立博物館を訪れるのも良いでしょう。午後遅くに「帰宅」し、エット・ヘムで焼きたてのケーキとコーヒーまたは紅茶を楽しむのがおすすめです。夕食前にはサウナやリラクゼーションルームでのマッサージでリフレッシュしてください。
可能であれば、友人や同僚を招いてディナーを共に楽しむのも良いでしょう。リビングルームでの食前酒に続き、緑豊かな温室、居心地の良い図書室、またはキッチンでディナーを楽しめます。キッチンではシェフたちが腕を振るう姿を間近で見ることができるでしょう。ディナーの内容は日替わりで、すべて地元の旬の食材を使用しています。食後はリビングルームでのナイトキャップや、コーヒーを飲みながらボードゲームを楽しむのも良いでしょう。宿泊は、浴槽、暖炉、小さなバルコニーを備えたジュニアスイートの2号室または5号室が特におすすめです。
朝は、テーブルサービスの朝食で始まります。紅茶、コーヒー、フレッシュオレンジジュース、新鮮な焼きたてパン、自家製バターやジャム、チーズやハム、自家製グラノーラを添えたヨーグルト、新鮮な果物やベリー、そしてお好みの卵料理をご用意しています。

理想的なラグジュアリー体験をどのように表現しますか?

私は、相手からの敬意とオープンな姿勢を大切にした接し方を望んでいます。リラックスできて、安心感と快適さを感じられることが何より重要です。美しいものに触れると心が動かされ「美しいものは永遠の喜び」という言葉がまさにそれを表していると感じます。ただし、無知で失礼な態度には落胆してしまいます。

ホテルの未来についてのビジョンはありますか?

私たちは、パンデミックの試練を驚くほど上手く乗り越えることができました。小規模であることや、ゲスト一人一人に心のこもったおもてなしを提供してきたことがこの困難を乗り切る助けとなったと信じています。
特にストックホルムの地元のゲストが私たちを見つけ、温かく支援してくださったことに大きな喜びを感じています。これからも私たちは地域に根ざし、本来の姿を大切にしながら、ゲストがリラックスし、心からのおもてなしを受けていると感じられる安全な空間を提供し続けるでしょう。
今後は、ゲストの個々の健康やウェルネスにも一層力を入れていきたいと考えています。エット・ヘムは絶えず進化し、洗練を重ねていきます。

執筆:クロエ・フロスト=スミス