世界で最も憧れられるブティックリゾートを生み出すことを使命とするなら「真に卓越したラグジュアリーホテル」とは何によって決まるのでしょうか。アンティグア西海岸の黄金色のビーチに佇む、自然に包まれた隠れ家「ハーミテージ・ベイ」の大規模改装を終えたばかりのSLH共同オーナー、ダニエル・シャムーンが、島での暮らしが持つ抗いがたい魅力について語ります。
もしダニエル・シャムーンに「最も居心地の良い場所はどこですか」と尋ねたとしても、ロンドンやパリのような大都市の名前が返ってくることはないでしょう。マルベーリャからマラケシュまで、世界有数の洗練されたリゾートを手がける「スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド」の共同オーナーである彼にとって、その答えは、もっとゆったりとしていて、潮の香りが漂い、太陽が降り注ぐ場所にあるのです。
「島のデスティネーションには、昔から特別な情熱を抱いてきました」と彼は言います。アンティグアのハーミテージ・ベイからターコイズブルーの海を見渡すテラスに腰掛けながら、こう続けます。
「長年バハマで過ごしてきましたが、アンティグア・バーブーダにはまた違った魅力があります。50〜60年前のイビサを思い出させるんです。自然が美しく、少し野性的で、環境に配慮した開発の可能性に満ちている場所です。」
この懐かしさと未来志向が混ざり合った感覚こそ、ダニエルのアプローチそのものです。彼は、眠ったような島にきらびやかな新築ホテルを突然建てることには興味がありません。むしろ既存のホテルが持つ個性を引き出し、その土地の自然な延長として蘇らせることに重きを置いています。3年前にハーミテージ・ベイを引き継いで以来、彼はこのリゾートに穏やかでありながら徹底した再生を施してきました。それは全面的な刷新というより「進化」と呼ぶべきものでした。
「ハーミテージ・ベイには、もともと素晴らしい骨格がありました」と彼は語ります。
「ビーチは島でも屈指の美しさでしたが、ホテル自体には古さが感じられました。そこで、魂を失わずにその可能性を最大限に引き出したかったのです。」
現在のリゾートは、環境負荷の少ないエネルギーに満ちています。太陽光発電、地元調達の建材、電動ジープ、そしてキッチンに食材を供給するオーガニックガーデンなどを導入。新鮮な食材は地元の漁師や農家と協力して調達されており、またリゾートチームは海洋生物学者たちと連携し、サンゴ礁再生プロジェクトにも取り組んでいます。


「ここで行うすべてのことは、自然への没入がテーマです」とダニエルは説明します。
「建物が周囲を支配するのではなく、自然そのものに包み込まれているのです。」
その他の改装としては、シグネチャースパの刷新があります。以前は丘の上にあったスパはビーチフロントへ移され、古代の儀式的要素と島の植物を取り入れたトリートメントを提供しています。また、30棟あるヴィラスイートもすべて改装され、屋内と屋外が自然につながる洗練された空間へと生まれ変わりました。
さらにゲストは、厳選された島ならではの体験も楽しめるでしょう。プライベートビーチでのピクニック、ロマンチックなサンセットクルーズ、新たに導入されたヴィンテージ・スクーナー船でのシュノーケリング体験など、厳選された島体験も楽しめます。
「でも、ハーミテージ・ベイの本当の心臓部はスタッフです」と彼は付け加えます。
「元々のチームをそのまま残し、約100人を自分たちの他のホテルで研修させました。彼らは新しいスキルと国際的な視野を持って戻ってきたんです。」
そのグローバルネットワークは非常に広範です。ラグジュアリー・ホテル・パートナーズ・グループの傘下で、ダニエルと妹のジェニカ・シャムーン・アラジは、「ノブ・ホテル・イビサ・ベイ」「ノブ・ホテル・マルベーリャ」「ノブ・ホテル・マラケシュ」「エル・ロッジ・スキー&スパ」「マリベル」「テランカ」など、華やかなポートフォリオを展開しています。
「ジェニカと私は、すべてを共同で行っています」と彼は明かします。
「 私たちは完璧に補い合える関係です。私はコンセプトや全体像に集中し、彼女はデザインや細部、ゲスト体験全体など、自分の得意分野を磨き上げます。そこに本当の魔法が生まれるんです。」
この姉弟のパートナーシップは、新たなプロジェクトも推進しています。ハーミテージ・ベイと並行して、現在彼らは「ノブ・バーブーダ」の開発を進めているのです。もともとは島に一軒だけあったレストランを、本格的なブティックリゾートへと変貌させる計画です。
ダニエルがノブ共同オーナーである俳優のロバート・デ・ニーロ、そしてシェフのノブ・マツヒサと初めて出会ったのは、2017年のノブ・ホテル・イビサ・ベイ開業時でした。仕事上の関係として始まったつながりは、互いへの敬意に基づく深い友情へと発展していきます。そしてその後、デ・ニーロがこう提案しました。
「バーブーダを見に来るべきだよ。」
一度島を訪れただけで、ノブ・バーブーダの構想は動き始めました。
ダイアナ妃ゆかりのプリンセス・ダイアナ・ビーチ沿いに広がるこのリゾートは、現在60%が完成しています。敷地内にはバンガロー、ビーチフロントレジデンス、ヴィラが並び、約2マイルにわたる手つかずの海岸線に点在。2027年開業予定のこの施設は、現代的なアイランドリゾートの新たな基準になると期待されています。
現在はノブレストランが島の中心的存在となっており、スーパーヨットやアンティグアからの日帰り客を引き寄せているのです。来店客の約3分の1はヘリコプターで訪れており、その中にはハーミテージ・ベイの宿泊客も含まれています。これもまた、新しく刷新された体験型サービスの一部です。
「ノブ・バーブーダは、まったく異なる挑戦でした」とダニエルは認めます。
「バーブーダにはインフラがほとんどなかったので、すべてをゼロから構築しなければなりませんでした。でも、それこそが刺激的なのです。私たちは島の未来そのものを形作る手助けをしているのですから。」
そして、その未来は持続可能なものでなければならないと彼は強調します。そのため、ノブ・バーブーダの低環境負荷型バンガローは、景観に溶け込むよう設計されているのです。
「近くまで歩いて行かないと見えないほどです」と彼は説明します。
「私たちの目標は、自然に溶け込み、地域社会と共にあり、環境にも責任を持つリゾートを作ることです。」


カリブ海以外でも、ダニエルの創造的な挑戦はとどまることを知りません。
今後2年以内には、スペイン・タリファに新たなサーファーシックリゾートの開業を予定しており、「このエリアで最後に残された、本当に手つかずのビーチフロント」と彼が語る場所に、60棟のヴィラが誕生する予定です。
これほど巨大なホテル帝国を率いる人物にしては、ダニエルのウェルネスに対する考え方は驚くほど自然体です。
「私は、病院のようなクリニカル・ウェルネスには興味がありません」と彼は語ります。
「SLHでは、ヨガ、ハイキング、瞑想などゲストが心に良いことをするよう勧めています。私たちのホテルに滞在していると、自然とスマートフォンを置き去りにしてしまう。自然や自分自身とのつながりを取り戻した気持ちで帰っていけるんです。」
こうした飾らない心地よさは、彼が手がけるすべてのホテルに共通しています。完璧さよりも「つながり」を重視する、控えめで本質的なラグジュアリーです。
「私たちは常に次の進化を探しています」と彼は静かに語ります。
「単にホテルを増やしたいのではありません。より良いホテルを作りたいのです。物語を持ち、人々を変える場所を。」
最後に、「アンティグアの特別な魅力は何ですか」と尋ねると、ダニエルは迷うことなく答えました。
「正直に言えば、人々です」と、彼は笑顔で言います。
「世界中を旅してきましたが、アンティグアの人々ほど陽気な人たちは見たことがありません。この場所を特別なものにしているのは、彼らなんです。」
他者のための「逃避先」を作り続けてきた人生の中で、島々はダニエル自身にとっても、世界から離れ、本当に大切なものへ意識を向け直すための場所となっているのです。