フランスの遥か西の海岸へと旅してみませんか。まばゆい白砂のビーチが、力強い潮の流れと風に削られた岬へと続く、魅惑の地では、時間がゆっくりと流れ、広大な風景が広がり、どの町も手つかずの美しさを残しています。
この4日間の車の旅では、ブルターニュ北部のエメラルド海岸に沿って進み、牡蠣の名産地カンカルから、風の吹きすさぶ断崖カップ・フレエルまでを巡ります。爽やかな海辺のハイキングに、魅力的なビーチタウン、そしてこの地方ならではの食文化を味わう旅へと出かけましょう。
宿泊先
ル・ネセ(Le Nessay)は、サン=ブリアック=シュル=メールにある、海辺のシャトーを改装したブティックホテル。赤レンガ模様の外観とクラシックな塔がブルターニュらしい佇まいを感じさせます。
内装は温かみのある上品な雰囲気で、独立型バスタブや市松模様の床、そしてどの部屋からも海が見える設計が魅力です。
ホテルの目の前には、プラージュ・ド・ラ・サリネット・ビーチが広がり、リラックスした一日を過ごすのに最適。また、エリアの中心に位置しているため、周辺の名所への日帰り旅行にも便利な拠点です。
旅の始まりは、フランスでも屈指の観光名所モン・サン=ミッシェルへ。ブルターニュの境界を越えたノルマンディーに位置しますが、ル・ネセから車でわずか50分の距離にあります。
ヨーロッパで最も干満の差が大きいこの場所では、潮位が水位が最大15メートルにも達します。満潮になると完全に水に囲まれるという自然の防衛機能を活かし、天然の要塞としてこの地に築かれました。
島へは駐車場から徒歩(約30〜40分)またはシャトルバスでアクセス可能です。観光客が多く混雑しがちですが、それでもなお非現実的な光景に心を奪われます。螺旋状の坂道を登っていくと、頂上にそびえるサン=ミッシェル修道院へたどり着きます。修道院の内部見学も魅力ですが、何よりもそこからの眺めは格別です。
夕方にはカンカルへ移動しましょう。ここは海沿いの町で、牡蠣の名産地として知られています。海を望む遊歩道からは、海中に広がる養殖棚が見渡せます。ディナーには桟橋沿いのレストランでシーフードディナーを楽しんでください。おすすめは「レストラン・ラトリエ・ド・リュイットル」。一日の締め括りに、海から揚げたての新鮮なカキを味わってください。


ホテルから車でわずか25分、城壁に囲まれた港町サン・マロはぜひ訪れたいスポットです。旧市街を囲む石造りの城壁の上を歩きながら、干潮時のビーチや灰色の石造りの町並みを一望できます。
この町を楽しむなら、空腹の状態で訪れるのが正解。まずは地元の名店「クイニーアマン・ド・サン・マロ」へ行きましょう。バターと生地を幾重にも重ね、キャラメリゼされた表面が香ばしい、ブルターニュ名物クイニーアマンは、外はパリパリ、中はしっとりの究極のバター菓子です。
続いて立ち寄りたいのは「ボルディエバターの家」。フランスでも屈指のクリーミーなバターが、伝統的な手法で一つ一つ手作りされています。中でも「ドゥミ・セル(半塩)」は絶対に味わいたい一品。
ランチは「クレープリー・ル・トゥルヌソル」で伝統的なガレットを味わってみてください。そば粉で作られるクレープで、ハム・卵・チーズの定番コンビネーションは外せません。
午後は、湾を挟んだ向かい側の町「ディナール」へフェリーで渡ります。町を散策したり、広々としたプラージュ・ド・レクルーズの広いビーチをでのんびり過ごすのもおすすめです。ディナーには、ミシュラン一つ星のレストラン「ル・プールクワ・パ」で特別な時間を過ごすのも良いですし、町の中心にあるカフェ「メルシー・ムッシュー」で気軽に軽食を楽しむのも素敵です。
旅の3日目は、ドライブをお休みしてホテル周辺でゆったりと過ごしましょう。ル・ネセからすぐのビーチはどこもエメラルド海岸らしい美しさです。
特におすすめは「グランド・サリネット・ビーチ」。ネセ半島に位置し、柔らかな黄金色の砂と穏やかな澄んだ海が広がる静かなスポットです。人も少なく、のんびりと過ごせるのが魅力。
徒歩で15分ほど足を延ばせば、よりこぢんまりとしたプティット・サリネット・ビーチや、半島の反対側にあるブシェ・ビーチへも行けます。
お腹がすいたら、ホテルのレストランへ行きましょう。シェフ・ヴィクトール・ブルトンが手がける季節感あふれる料理は、地元の食材を活かした絶品揃いです。夕暮れ時には、カクテルと軽食を楽しみながらテラスで海に沈む夕日を眺めてみてください。


最終日は、歩きやすい靴と水筒、軽食を持って、エメラルド海岸の西端へハイキングに出かけましょう。ホテルから車で約45分、カップ・フレエルは断崖の上に灯台が立ち、見晴らしも抜群です。
海岸沿いの有名な「GR34」通称「関税吏の小道」を歩いて、約4.7km先のフォール・ラ・ラットを目指します。14世紀に建てられた要塞で、崖の上にたたずむ姿は圧巻。小額の入場料で内部見学もできますが、外から眺めるだけでも十分価値があります。往復で2.5〜3時間のハイキングコースです。
午後は、ブルターニュで最も美しい町の一つディナンへ向かいます。ランチは「クラフティ」でいただきましょう。自家製キッシュと新鮮なサラダが評判の小さなカフェです。
食後は石畳の旧市街を歩き、ランス川沿いの下町まで足を伸ばしてみてください。体力に余裕があれば、自転車をレンタルして隣村レオンまで川沿いの道を往復するのもおすすめです。最後の夜は、再びル・ネセに戻って、海辺の穏やかな時間をお楽しみください。


サン=ブリアック=シュル=メール滞在中は、「ラ・ペッシュ・ア・ピエ」と呼ばれる潮干狩りに出会えるかも。干潮時に浜辺を歩きながら、ムール貝やアサリを手で採取する、地元の人々に親しまれている伝統的な漁法です。
文:Jenoa Matthes