標高1,550メートル、雲の中へと続くような険しいエールヴァルダー・アルムの斜面に位置するエリロには、わずか9室の客室しかありません。ここは、都会の生活がもたらす騒音や速いペースから離れ、静かな静かな逃避先を求める人々のための場所です。ゲストに「より多くすること」ではなく、「より少なくすること」を促すこのホテルは、自分自身や周囲の風景と再びつながる機会を提供しています。この「少ないことこそ豊かである」という哲学は、デザインやウェルビーイングのコンセプト、そして料理に至るまで、体験のあらゆる部分に反映されています。料理では地元の食材が中心的な役割。マッサージオイルや癒やしのハーブから、皿の上に並ぶ食材まで、この土地との強いつながりが、ホテル全体を通して感じられます。

ホテルの始まりについて教えてください。

物事は、明確なアイデアや決められたコンセプトから始まったわけではありません。むしろ、それは時間をかけて私たちの中に残り続けた、静かな感覚のようなもの。私たちは皆、日々の生活が以前よりも騒がしく、速く、そしてどこか重たくなっているように感じていました。そこから、私たちの会話の中で何度も繰り返し浮かんできたシンプルな問いがありました。「到着した瞬間に、日々背負っているものをそっと軽くしてくれる場所があったらどうだろう?」という問いです。

そこから先は、多くの対話を重ねながら、時には計画もないまま、少しずつ形になっていきました。でも、目指していた方向は常に同じでした。それは、日常の流れから少し離れ、自分自身を取り戻せるような場所をつくること。そこは、あなたにただそこにいるだけでいいと思わせてくれる場所。もっと何かをしなければならない、もっと見なければならない、もっと体験しなければならない、と期待する場所ではありません。その代わりに、静かに「もっと少なくていい」と許可を与えてくれる場所です。ゆっくりすること。呼吸すること。そんな時間を過ごせる場所です。

場所について教えてください。

私たちは、標高1,550メートルのエールヴァルダー・アルムに位置しています。街の騒音や速いペースから遠く離れた場所です。ここに来ると、風景は独特な広がりを見せます。広大なアルプスの草原が広がり、季節ごとに表情を変えます。夏には野生の花々が豊かに咲き誇ります。周囲には壮大な山々がそびえ、水平線は近く感じられると同時に、無限に続いているようにも感じられるでしょう。澄んだ湖、静かな滝、そしてどこまでも続いているような森があります。

アルムでの生活には、独自のリズムがあります。ゾッテル牛(この地域で飼育される牛)や馬たちは土地の上を自由に歩き回っているのです。時には遠くに姿を現し、静かにそこに存在しています。朝食の時間でさえ、まるで朝の儀式の一部であるかのように、彼らが姿を見せることがあります。また、この場所には深い敬意が結びついています。エールヴァルダー・アルムは地域社会にとって特別な意味を持つ場所です。ある意味で、神聖な土地なのです。そのため、ここでのすべてのことは細心の注意を払って取り組まれてきました。建築は意図的に控えめにしています。ほとんど謙虚と言えるほどで、自然の中で主張するのではなく、その場所に馴染むようにデザインされています。

新しいものを風景の中に置くというよりも、「昔からそこに存在していたものの一部になること」なのです。

あなたにとって、良いホテルとはどのようなものですか?

私たちにとって良いホテルとは、特別であることを過剰に主張しない場所です。必要なサービスはそこにありながら、決してゲストに押しつけることはありません。すべてが自然に整えられているという安心感。そして、さりげない心遣いが静かに積み重なり、滞在後も記憶に残る、そんなおもてなしを大切にしています。

また、大切なのは一貫性です。建築から雰囲気、素材、人との関わり方に至るまで、すべてがつながっている場所。何も偶然に置かれたものがなく、何も無理に作られたものがない場所です。そして何よりも、本物の温かさが感じられること。演出されたものではなく、過度に磨き上げられたものでもなく、正直で自然なもの。証明しようとしなくても自然に伝わってくる、おもてなしです。結局のところ、大切なのは「何が提供されているか」ではなく、「そこにいることで、自分がどのように感じるか」なのです。

”館内のいたるところに、小さな発見があるでしょう。手仕事によって生まれたものや、それぞれに物語を感じられるものが散りばめられています。現代では、あらゆるものが完璧に整えられ、洗練されすぎる傾向があります。私たちはそうではなく、あえて少しの揺らぎや不完全さを残しました。”

どのような感覚を生み出したいと思いましたか?

私たちは、人はまず空間を「見る」のではなく、「感じる」のだと思っています。ここでは、その感覚はしばしば山々から始まります。その大きさ、静けさ、広がりの感覚。それらが人を落ち着かせ、地に足をつけさせてくれます。館内に入ると、その感覚はより親密なものになるのです。人は動き方を変え、少しゆっくりになります。時には靴下のまま歩き、素材や質感を足元で感じながら過ごします。そして、そこには一度の滞在ではすべてに気づくことのできない、小さなディテールがあるのです。館内のいたるところには、手仕事の跡や、それぞれに物語を感じられるものが散りばめられています。完璧に磨き上げられた空間ではなく、あえて少しの揺らぎや不完全さを残しました。そうすることで、そこに込められた人の手や時間、そして作り手の想いを感じられるようにしています。

食事は体験の大きな部分を占めていますね。料理への考え方を教えてください。

私たちは、いくつかのとてもシンプルなルールに従っています。しかし、それらを厳格に大切にしています。まず始まりは、多様性や珍しさよりも、地元の質の高い食材を選ぶこと。私たちは食材を地元から調達しています。山が与えてくれるものを採取することもあります。ただし、それは季節によって大きく制限されるのです。また、地元の農家、生産者、猟師が提供してくれるものも使っています。第二に、その食材を本来の形で調理すること。私たちのシェフは、伝統的な保存方法、発酵、火を使った調理法を用いています。それは、祖母たちが昔、料理を作ったり保存したりしていた方法です。ただし、それをさらに高めた形で提供しています。最終的に大切なのは、もう一度感情とつながることです。時には、最もシンプルな料理が、最も素晴らしい反応をいただくことがあります。焼きたてのパン、手で泡立てたバター、そして山のハーブ、そんな料理です。

サステナビリティについて、どのように考えていますか?

今日、サステナビリティという言葉は、あまりにも簡単に使われることが多いように感じます。誰もが「サステナブルでありたい」と考えています。しかし私たちにとって、それはもっと具体的なものにならなければなりませんでした。単にそう語ることではなく、実際にどのように行われているかということが大切。それは、非常にシンプルなところから始まります。つまり、何がどこから来ているのかということです。私たちが使用するもののほとんどすべては、この場所から約50km以内の範囲から届いているのです。食材は季節の流れに従っています。冬には、夏の間に保存しておいたものを使って料理をします。それはよりゆっくりとしたリズムですが、それこそが自然で正しいあり方だと感じられるのです。

この場所がどのように建てられたかについても、同じ考え方が当てはまります。私たちは、ほぼ完全に地元の企業や素材を使って建設しました。私たちは、物がどこから来たのかを知っています。時には、とても個人的なつながりを持って知っているものもあります。例えば、カーペットや壁に使われている羊毛を提供してくれた羊のことを知っているのです。木材は、私たち自身の森から来ています。暖房でさえ、同じ土地から得られる木材チップを利用しています。

もちろん、これは完璧なシステムではありません。そして、完璧なものとして見せようとしているわけでもありません。しかし、それは誠実であり、身近なものです。そして、おそらくそれこそが、サステナビリティが本来持つべき感覚なのだと思います。つまり、実際に触れることができ、どこから来たものなのかをたどることができるものなのです。

エリロを今後どのように発展させていきたいですか?

私たちは、エリロを従来の意味で成長させていくことは考えていません。大きくすることや、何かを追加して増やしていくことが目的ではありません。もし何かあるとすれば、それは今あるものをより正確にし、さらに磨き上げていくことです。時間をかけて落ち着かせながら、何が本当に正しいと感じるのか、そして何がそうではないのか、より深く理解していくことです。

時間が経つにつれて、この場所がより多くの個性を持つようになることを願っています。ここを訪れた人々の物語や、その人たちが残していった痕跡を、この場所が受け継いでいくこと。もしかすると、物は少しずつ古び、変化し、より柔らかく、より自然なものになっていくかもしれません。