20世紀半ば、ポルト・エルコレはハリウッドのジェットセッターたちが集うホットスポットでした。現在は、デザインを重視したホテル「ラ・ロッカ」が、この素朴な海辺の町、そしてあまり知られていないアルジェンタリオ海岸を、再び世界の旅人たちの注目へと引き戻しています。

概要

トスカーナと聞くと、緑豊かな田園風景や丘の上の街、陽光にきらめくブドウ畑を思い浮かべるかもしれません。しかし、海岸沿いの地域も同じように美しく、イタリアのほかのコスタ(海岸)に比べると格段に人が少ないのが魅力です。
その代表例が、アルジェンタリオ半島の荒々しい岬に位置する、魅力あふれる海辺の町ポルト・エルコレ。スウェーデン人起業家のコンニ・ヨンソン氏は、長年この地域で夏を過ごしてきましたが、ある日、お気に入りのエリアに古びた中級ホテルが売りに出されているのを目にしました。そこから「ラ・ロッカ」誕生の物語が始まりました。

雰囲気は?

ローマから車で約90分、あるいはオルベテッロ駅からタクシーで10分。半島と本土をつなぐ細長い砂州を渡っていく道のりは、小さな島へ向かう旅のような高揚感があります。
ラ・ロッカは、ポルト・エルコレの港の端に建つ印象的なテラコッタ色の建物で、マリーナに並ぶ船を見下ろす丘の中腹に凛と佇んでいます。

スタイルは?

改装を任されたのは、ミラノを拠点とするパロンバ・セラフィーニ・アソッチャーティ・スタジオ。かつての華やかな町の歴史に着想を得て、1960年代のドルチェ・ヴィータを現代的に大胆に再構築しました。
建物の外観と同じ大胆なテラコッタ色は、ミルキーな白壁やテラゾー床と調和しつつ随所に取り入れられています。共有スペースには、イタリアンデザインの巨匠たちの名作家具が並び、まるで“デザインの殿堂”のようです。フロスのアーコフロアランプがベリーニのソファを照らし、ガエタノ・ペシェの名作「アップチェア」も存在感を放ちます。
さらに、1階奥の棚には地元作家による陶器がずらりと並び、すべて購入可能。つい欲しくなってしまうほど魅力的です。

客室は?

インパクトのある共有スペースとは対照的に、客室は落ち着いた雰囲気にまとめられています。
全50室は5つのフロアにわかれ、それぞれ バーントオレンジ、セージ、ダスティブルー のいずれかを基調にデザインされています。木製家具、大理石のアクセント、テラッツォの床など、控えめながら上質感のある空間です。

大半の客室にはポルト・エルコレの港を望むバルコニーがあり、残りの客室からは背後の緑豊かな丘が見渡せます。客室には浄水ディスペンサーが備えつけられ、ラ・ロッカのオリジナルボトル(持ち帰り可)が添えられているのも嬉しいポイント。バスルームにはオルティージアのアメニティが並びます。

食事とドリンクは?

屋上のレストラン兼バー「シロッコ」はまさにこのホテルの大きな魅力。アペリティーボの時間になると、幾何学模様のタイルテーブルが埋まり、ゲストも地元の人も、夕日に染まる湾のパノラマを眺めながらグラスを傾けます。
夕食では、トスカーナ出身のシェフが地元食材を巧みに使い、8種類のトマトで作るスパゲッティ・オット・ポモドーリや本日のグリル魚は必食。
朝食も屋上で提供され、クラシックなアラカルトメニューを中心に、日替わりのホームメイドケーキやコンフィチュールが、紅茶やコーヒーとともにテーブルに運ばれてきます。

他に知っておくべきことは?

おそらく最大の魅力は、宿泊者が無料で利用できるイゾロット・ビーチクラブ。徒歩10分(または送迎で3分)の小さな入り江に、広々とした芝生のテラスが広がり、セージグリーンのサンベッドと縁が波打つホタテ貝のような形のパラソルが並びます。地中海を眺めながら、ゆったりと過ごすのには最適です。
併設のビーチバーでは、上品なサンドイッチやサラダ、ジェラートを、日陰のテラス席またはサンベッドまで届けてくれるでしょう。
また、ラ・ロッカは思いやりコレクションのメンバーとして、館内の家具はすべてサステナブルな素材で作られており、自家製オリーブオイルの生産や自家製ワインづくりにも取り組んでいます。さらに、近隣オルベテッロの社会的協同組合ロルト・ジュストを支援し、障がいのある若者たちが有機野菜や果物を育てる活動に貢献しています。